第4回 C値(気密)0.21 Ua値(断熱)0.36

上写真は当社尾添監督がY邸のC値(隙間相当面積)測定を行っている写真です。当社では完成新築宅すべてで気密測定を行っております。

上の表、四角で囲った数値が測定結果で、Y別荘の相当隙間面積は26、それを床面積123.22㎡で割った数値0.21がY別荘のC値となります。この別荘は高地にあり、特に気密に拘った事もあり当社のなかでも最高水準の気密建築となりました。

C値基準に法的な縛りはありませんが2000年に国交省が定めた「次世代省エネルギー基準」ではC値の目標値が設定され、 例えば北海道ではC値2以下、尾張美濃地域だとC値4以下が推奨されています。現在の一般的認識は4以上は「スカスカ住宅」2以上は非気密住宅2~1は標準的気密住宅、1~0.5は高気密住宅、0.5以下は超高気密住宅と区分できるでしょう。即ち0.21㎠という数値は最高水準の気密住宅であり、達成は容易ではありません。

当社が今回この数値を達成できたのは約25年前に、当時高価なこの「気密測定器」を思い切って買った事に関係します。気密は目で見えるものではありません(プロであれば体感である程度は察知できる)のでこの測定器が欲しかった訳です。

気密測定の方法は、家の中の空気を外に捨て旅客機の中(約900HP)のように低気圧にします、すると外から空気が中に入ろうとするのでその差を計測、C値を算定する訳です。この測定器を稼働させますと想定外の箇所(隙間)からビュンビュン風が侵入してきますので「あぁ、そうなのか…」というように隙間の位置が分かってくるので、そこを改良、当社の造る家のC値が上がって行ったのです。現在当社の家のC値は0.4~0.7ほどが普通です。

「気密なんてどうでもいい」という方もおりますが、それは間違いです。確かに気密と断熱は非常に微妙な関係にあり、へたに行うと「結露」という建築にとって「宿命的天敵」を引き起こす事になりますので、よくよく結露の原理を理解した上で個々の部位の納まりを決める必要がありますが、一言で言うと外断熱が安全、且つ効果的な事は確かです。

上の表は「住宅性能評価表示協会」のエネルギー消費性能計算シートによりY邸別荘の「外皮平均熱還流率(Ua値)」と「冷房期の平均日射取得率(ηac)」を計算したものです。当社は建築確認等の審査機関に対し、この公認計算様式にて省エネ住宅である事を証明、お客様への各種助成金獲得の場合の資料としています。

表を解説しますと建物は省エネ区分3地域(1~8地域に区分)にあり、平屋で屋根、壁、床の(外気との境の)総面積は414.8㎡でUa値0.36、ηac値(イータ)1(これは主に夏対策でまた別稿で説明)という事、そして法的には等級4でよいが、計算結果がUa値0.36と非常に良く、等級5の基準値0.5を大きく上回っているのでY別荘は等級5である事を認める-という内容になります。

 Y別荘がもし尾張美濃地域にあったとするとどうなるか?尾張美濃は東京、大阪と同じ6地域にあります。6地域の等級6はUa値が0.46以下、従って0.36のY別荘の断熱性等級は6となります。もしY別荘が、最もキツイ1地域の北海道だったらどうなるか?北海道の場合、等級5の基準値はUa値0.4以下です。が、Y別荘は0.36、つまりY別荘をそのまま北海道で建てたとしても断熱性等級5の高断熱住宅で充分通用します。

この4月から日本では①断熱性等級4以上 ②簡易構造計算による住宅の安全性の証明、の二つが必須とされ、その条件の計算書が添付、クリヤーされないと原則「家は建てられない」事となり「安心安全の国、日本」は遂に大変な時代に突入したと言えます。

①も②も計算が必要で(決まり切った家でない場合特に)簡単ではない上、その計算が正しいかどうかをチェックする審査機関も頭を悩まし現在書類が、即ち建築行政が滞っている状況にあります。そんな訳で書類審査に時間がかかる等、当社のお客様にも手続きのスピードに於いてご迷惑をお掛けしている事を心よりお詫び致します。

↑ Y別荘のフェノールボード90厚による屋根外断熱施工中、フェノールの上に通気層を設け12mmボードを打って屋根を葺きます。この通気層がフェノールの劣化を押さえ、且つ放射冷却に多大な効果を発揮します。フェノールは高価ですが熱に強く劣化しにくい、実質普及する断熱材では最高級断熱材です。標準は60厚で行っています。

↑ Y別荘の外壁フェノール外断熱60厚施工中です。標準はPOS(ポリスチレン)60厚で行っております。

↑ Y別荘の内側16㎏GW120厚の内断熱施工中、壁は外と内のダブル断熱で行っていますが、当社の家は殆どがこのダブル断熱となっています。標準は平屋の場合100厚です。ここは多雪地域で柱120角とし、断熱も120と厚くしております。

↑ Y別荘の床断熱施工中。通常はEPS90厚が当社標準ですがここは寒冷地ですのでフェノールとしました。(熱伝導率がフェノールは0.02、EPSは0.03)以上簡単に言うとこの建物は面材で四方を包んで気密、その「箱」を、最も熱伝導を断つ高級断熱材・フェノールボードで四方を包んでいると言う事です。以上読みにくい気密断熱の記事、ここまで読んで戴いた方に心より感謝申し上げます。質問は玉井までどうぞ。