第2回 設計条件の違い

↑これはY邸付近にあった別荘です。急勾配屋根ですが雪は滑り落ちていません。またストーブ煙突が屋根出しになっています。その場合はできるだけTOPに設置の要があります。雪が煙突を押す危険、使用中だと火災の恐れも生じ、やはり壁出しの方が安全でしょう。

↑これは北海道で近年流行の無落雪屋根(屋根勾配がほぼ無い)の家の写真、札幌等の市街地だと隣との隙間がなく、そこに雪が溜まってトラブルの元に、それを避ける為、雪は「風で飛んでいく、or春まで屋根に溜め解けるのを待つ」北海道では案外積雪量が少ない(が解けない)事情もあります。私はフィンランド・有名建築家・アルバアールトの自邸を見た事がありますがやはり無落雪屋根でした。
建築構造 の考え方は①自重②積載荷重③風or地震荷重④積雪荷重、の4つに対抗するというものです。4つのうち、ひるがのに特有なのは積雪荷重だけです。岐阜市は一般地で積雪指標40㎝に対し、ひるがのは多雪区域で、約6倍、基礎、及び構造木材が随分大きくなってきます。
雪も雨もできるだけ早く地上に落とし溜めない事が建築では賢いやり方です。多雪地域では複雑な屋根だと、そこに雪が溜まるので単純切り妻が一番無難です。Y別荘では当初8角形を試案しましたが、結果、単純切妻(雪割付き)としました。なお屋根をいくら急勾配にしてみても滑り落とす事は容易ではありません(写真参照)
薪ストーブの煙突も悩む所です。できるだけ雪の影響を受けない為Y別荘では屋根出しではなく壁出しとしました。樋は迷うところですが、北海道では通常設置しません。雪で押され樋の意味がないからです。今回Y別荘ではナシとしました。

これは私が設計した高原の保養所です。勿論凍結深度と落雪を考慮しております。

↑1999年の正月、私ほか3人、八方尾根登山、極寒、地吹雪、風速40m?立っていられない、谷底へ吹っ飛ばされる恐怖、ピッケルを突き刺し膝を屈して耐風姿勢を取り、風が息をするのを待ってまた行動…霜柱を踏みながら登攀、ジャリジャリとガラスの割れるような嫌な音が、霜柱は恐らく10㎝以上あったでしょう。この霜柱が建物を持ち上げる事があるのです。私はモスクワのトルストイの自邸を見学した事がありますが土台が傾斜していました、恐らく凍害のセイだと思われます。
この八方尾根登山、真上を見ると空は真っ青、つまり晴天でした。が、前後左右は真っ白でホワイトアウト、つまり雪は降っているのではなく強風が積もった雪を吹き上げていたのです。山小屋に帰ると全員鼻の辺りが黒くなっていました、軽い凍傷だと思います。登山は色々な自然現象が体験できて面白いですよ。
凍結対策:「水」というのは建築では常に厄介です。その一つが「凍害」です。土には水が含まれ基礎が浅いと寒冷地では霜柱が基礎を持ち上げる恐れが出ます。ひるがのは寒冷地で凍害の恐れがあり深基礎としております。が、多雪のひるがのでは雪が地面をカバー、断熱材となりますので比較的安全です。
更に凍結による水道管破裂の恐れがひるがのでは激しくなります。別荘では冬、無人になる事も多く「春に行ったら水浸し」という事故はよく聞きます。北海道では夜寝る直前に水道管を空にします。空にすれば凍れない、従って破裂しないからです。水道工事は寒冷地では費用がUPします。
除雪等:郡上市は市道(公道)については除雪しますが私道については除雪しません。Y別荘は当初別の分譲地で計画していたのですが、そこが市道に面しておらず上下水、その他公共サービスに不安大きく、土地を変更、建設地は市道に面し、上下水は郡上市管理となり除雪もしてくれ安心となりました。別荘地を買う場合はよく調査する必要があります。