第5回 Y邸別荘建設日記 日射遮蔽は?夏をどのように凌ぐか?

上はひるがのY別荘営業時に当社が描いた、完成予想パースです(パースの煙突は屋根出しになっていますが実際は壁出しへ。始め屋根出しで計画、後に壁出しに変更)

バルコニーの長い庇、及び南東出隅の連続木窓上の「DAIWA付け庇」は日射遮蔽の数値を押えます。前回(第4回)Y別荘のUa値(外皮平均熱貫流率)について解説しましたが、それは冬の話で現在は真夏、今回は「夏」について述べてみる事にしました。

夏対策を公式に表す数値としてはηAC(η=イータ-:夏の平均日射取得率)があり、前回の記事の中で示した「熱計算結果表」ではY別荘の数値は「1」でした。この数値は極めて低い数値でありY別荘は「非常に涼しい家」です。(低すぎると冬困るという議論はある)

上表は国が決めた住宅のUa値(冬対策)と夏のηAC値(夏対策)です。全国は1~8地域に分けられ尾張美濃は東京大阪と同じ6地域、ひるがのは3地域、北海道は1地域、沖縄は8地域です。沖縄は亜熱帯でUa値基準はなく3地域の、ひるがのにηAC基準値はありません。つまりY別荘の「1」は参考であって法規制とは無関係という事です。尾張美濃地域のηAC値基準は上表のように2.8以下で、当社が造る新築住宅の標準的ηAC値は1.5程です。

その平均日射取得率は何で決まる? 国は ①方位 ②窓の面積と性能、及びその窓への太陽光の入りにくさ(庇の出等)③屋根、壁の性能(床は加味しない)の三つをその要素としています。Y別荘は ①方位が真北で絶好 ②窓が木3重ガラス&樹脂でアルゴン入りローイーペアガラス、庇の出が長い(標準90㎝で長い個所は最大3.3mも出ている)③屋根、壁の断熱が良く太陽熱を侵入させない-です。

以上が我々住宅業者が国から受ける法的規制になり、この4月から大部分の住宅は、この熱計算と構造の計算書添付がないと許可が下りなくなりました。当社の作る新築は標準でこの国基準を充分上回っていますのでご安心下さい。

では法規制を守っていれば夏冬快適-とはいきません。上図はY別荘の標準断面ですが概ね当社の「冬暖かく夏涼しい家」の考えが取り入れられています。この別荘は、主眼は夏の避暑にありますが、できれば冬も使用したいとの事で「DAIWA床暖房」を設置しました。この床暖は夏の冷房にも有効で、すでに多くのお客様に採用されています。このシステムは私が18年前、自宅建設の際、考え、実験的に試みたものですが調子が良く、その後特許を取得、ほぼ永久装置ですので現在も機能、家全体を快適にしてくれています。

話を夏に戻しますと、以下に ①夏、どのように涼しい家を造るか? ②夏をどのように快適に過ごすか? 魔法はありませんが列記してみました、ヒントになれば幸いです。

〇暗い方が温度は低い(床下が夏は一番温度が低い・冬は高い)〇昼より夜の方が気温が低く朝が最低 〇夏も、、24時間、365日、放射冷却は起きている 〇日本の夏の空は水瓶(絶対湿度が高い・相対湿度と絶対湿度の違いをはっきり理解すべし)〇直射光はとにかく避ける 〇水は空気の千倍重い(水の威力は大きい)〇風の力は大きい(風がないと気化熱利用は困難)〇日本の夏は熱帯である(ヨーロッパと日本の気候は全く異なり単純な真似は×)〇太陽光はすべてを劣化させる 〇エアコン、冷蔵庫、エコキュート等、ヒートポンプの原理、結露の原理をしっかり把握しよう。

夏が大嫌いな方へのヒント写真、以下3枚。

ノースライトの家 多治見で造った家ですがLDKは北に面し(北側は自分所有の林)北側を大きな窓とし、南側の窓は小さくして直射光の侵入を押さえています。林間にあり、特に西日は屋根壁に当たりにくくしています。なおこの家は外断熱ですが、冬も夏も内断熱より外断熱が優れています。

これは私の家の土間部屋です。土間は地熱の関係で夏は悪くありません(冬は逆)屋根もガラスで確かに夏は暑い(冬の昼間は快適)ですが、真空ガラスを使用、更にその上に白テントを張っていて(白は熱を反射・冬ははずす)夏の昼間もエアコンの効きがよく快適です。真空ガラスは熱伝導が0なので(放射熱はある)最高性能ガラスです。カーテンブラインド類はできるだけ外に巡らすべきです。

私の家の中庭は東向き(左が北)西日は隣の大きな家と自分の家が遮ってくれ中庭は午後からは日陰になります。午前はテントで直射光を遮断しています(冬ははずす)

屋根に実験的に井戸水スプリンクラーを付けてみたところ、これは効きます。が、屋根が錆びる等の心配もあり、お勧めできません。

写真中央奥の丸い土管は井戸水噴水です。真夏の真昼間、外気温36℃、土間温45℃。水を撒くと気温は1℃程しか下がりませんが土間はあっと言う間に25℃に下がり、溪谷のような快適感が味わえます、なにせ気化熱は水1gで539calの熱を奪いますから。

また清少納言の言うように「夏は夜」です。私は夜の散歩が好きで少し走って汗をかき、中庭でこの井戸水(≒19℃)シャワーを浴び、身体を冷やして寝るのが日課になっています。試したい方は是非ご来訪下さい。なお来月9日(土)は長良川全国花火大会ですが、私の家は大会場所に近く無料でよく見える場所があります、是非お越し下さい。

 第4回 C値(気密)0.21 Ua値(断熱)0.36

上写真は当社尾添監督がY邸のC値(隙間相当面積)測定を行っている写真です。当社では完成新築宅すべてで気密測定を行っております。

上の表、四角で囲った数値が測定結果で、Y別荘の相当隙間面積は26、それを床面積123.22㎡で割った数値0.21がY別荘のC値となります。この別荘は高地にあり、特に気密に拘った事もあり当社のなかでも最高水準の気密建築となりました。

C値基準に法的な縛りはありませんが2000年に国交省が定めた「次世代省エネルギー基準」ではC値の目標値が設定され、 例えば北海道ではC値2以下、尾張美濃地域だとC値4以下が推奨されています。現在の一般的認識は4以上は「スカスカ住宅」2以上は非気密住宅2~1は標準的気密住宅、1~0.5は高気密住宅、0.5以下は超高気密住宅と区分できるでしょう。即ち0.21㎠という数値は最高水準の気密住宅であり、達成は容易ではありません。

当社が今回この数値を達成できたのは約25年前に、当時高価なこの「気密測定器」を思い切って買った事に関係します。気密は目で見えるものではありません(プロであれば体感である程度は察知できる)のでこの測定器が欲しかった訳です。

気密測定の方法は、家の中の空気を外に捨て旅客機の中(約900HP)のように低気圧にします、すると外から空気が中に入ろうとするのでその差を計測、C値を算定する訳です。この測定器を稼働させますと想定外の箇所(隙間)からビュンビュン風が侵入してきますので「あぁ、そうなのか…」というように隙間の位置が分かってくるので、そこを改良、当社の造る家のC値が上がって行ったのです。現在当社の家のC値は0.4~0.7ほどが普通です。

「気密なんてどうでもいい」という方もおりますが、それは間違いです。確かに気密と断熱は非常に微妙な関係にあり、へたに行うと「結露」という建築にとって「宿命的天敵」を引き起こす事になりますので、よくよく結露の原理を理解した上で個々の部位の納まりを決める必要がありますが、一言で言うと外断熱が安全、且つ効果的な事は確かです。

上の表は「住宅性能評価表示協会」のエネルギー消費性能計算シートによりY邸別荘の「外皮平均熱還流率(Ua値)」と「冷房期の平均日射取得率(ηac)」を計算したものです。当社は建築確認等の審査機関に対し、この公認計算様式にて省エネ住宅である事を証明、お客様への各種助成金獲得の場合の資料としています。

表を解説しますと建物は省エネ区分3地域(1~8地域に区分)にあり、平屋で屋根、壁、床の(外気との境の)総面積は414.8㎡でUa値0.36、ηac値(イータ)1(これは主に夏対策でまた別稿で説明)という事、そして法的には等級4でよいが、計算結果がUa値0.36と非常に良く、等級5の基準値0.5を大きく上回っているのでY別荘は等級5である事を認める-という内容になります。

 Y別荘がもし尾張美濃地域にあったとするとどうなるか?尾張美濃は東京、大阪と同じ6地域にあります。6地域の等級6はUa値が0.46以下、従って0.36のY別荘の断熱性等級は6となります。もしY別荘が、最もキツイ1地域の北海道だったらどうなるか?北海道の場合、等級5の基準値はUa値0.4以下です。が、Y別荘は0.36、つまりY別荘をそのまま北海道で建てたとしても断熱性等級5の高断熱住宅で充分通用します。

この4月から日本では①断熱性等級4以上 ②簡易構造計算による住宅の安全性の証明、の二つが必須とされ、その条件の計算書が添付、クリヤーされないと原則「家は建てられない」事となり「安心安全の国、日本」は遂に大変な時代に突入したと言えます。

①も②も計算が必要で(決まり切った家でない場合特に)簡単ではない上、その計算が正しいかどうかをチェックする審査機関も頭を悩まし現在書類が、即ち建築行政が滞っている状況にあります。そんな訳で書類審査に時間がかかる等、当社のお客様にも手続きのスピードに於いてご迷惑をお掛けしている事を心よりお詫び致します。

↑ Y別荘のフェノールボード90厚による屋根外断熱施工中、フェノールの上に通気層を設け12mmボードを打って屋根を葺きます。この通気層がフェノールの劣化を押さえ、且つ放射冷却に多大な効果を発揮します。フェノールは高価ですが熱に強く劣化しにくい、実質普及する断熱材では最高級断熱材です。標準は60厚で行っています。

↑ Y別荘の外壁フェノール外断熱60厚施工中です。標準はPOS(ポリスチレン)60厚で行っております。

↑ Y別荘の内側16㎏GW120厚の内断熱施工中、壁は外と内のダブル断熱で行っていますが、当社の家は殆どがこのダブル断熱となっています。標準は平屋の場合100厚です。ここは多雪地域で柱120角とし、断熱も120と厚くしております。

↑ Y別荘の床断熱施工中。通常はEPS90厚が当社標準ですがここは寒冷地ですのでフェノールとしました。(熱伝導率がフェノールは0.02、EPSは0.03)以上簡単に言うとこの建物は面材で四方を包んで気密、その「箱」を、最も熱伝導を断つ高級断熱材・フェノールボードで四方を包んでいると言う事です。以上読みにくい気密断熱の記事、ここまで読んで戴いた方に心より感謝申し上げます。質問は玉井までどうぞ。

犬山・GX志向型住宅・K邸上棟

― 160万円獲得型 ―

昨日までの雨が上がり、当社大杉監督の元、大工等9人+レッカーの総勢11人により、朝8時から建前作業を開始しました。事前に土台伏せは終えております。

当社の登り梁工法の場合は建前も熟練を要し、今回もほぼ全員、いつもの手慣れた大工で行っております。当社の場合、建前当日はあっちの現場こっちの現場の大工が集合、協力し監督の指示の元、的確に作業を進めます。その日の目標は夜雨が降ってもいい所までーとなります。そこまで到達できない場合、或いは途中雨の場合はブルーシト養生となります。監督は天気予報と睨めっこしながら建前を段取りすることになります。

この家はさほど大きくない事等で作業は順調に進行、上写真のように三時頃には屋根ルーフィングを終え、これで雨が降っても大丈夫となり一息、という所です。この家は屋根外断熱、上垂木工法の家であり、このあとフェノールボード60厚を屋根に敷き&通気層確保の上、12mm合板を打ちガルバリウム鋼板屋根、そして太陽光発電5.6KW搭載となります。

これは2階を内側から見上げた写真です。当社の杉厚板登り梁工法は建前により天井が仕上がるという特徴があります。厚板なので非常に丈夫で屋根にいくら大勢が乗って作業しても安全な上、梁に面材を直かに打つ工法なので強靭、厚板は半永久断熱材、信頼度抜群の工法です。その上、内観も傾斜し、それにより空気循環がよく変化と美しさを兼ね備え、美と強度、断熱を兼ね備え、更に冬のキツイ放射冷却に対抗する、当社だけの優れた工法と自負しております。5時までに目標までの作業終了、感謝、感謝です。

この家はGX志向型住宅。「超断熱、高効率の家」で160万円の助成金が付きます。GX住宅には非常に厳しい要件があります。犬山は断熱等級の地域区分は6地域、尾張美濃地方と同じです。断熱等級は6、つまりUa値(断熱・平均熱還流率の指標)0.46以下が第一の要件になりますがK邸は0.42で充分クリヤー、第二の要件は一次消費エネルギー消費削減率が35%以上(国が決めた最高削減率は20%)なので要は超エネルギーの要らない家が要件という事です。K邸では高断熱の上に給湯器をリンナイの高機能機種にする事等で、削減率を36%まで下げ、太陽光発電搭載により「エネルギー自給住宅」を実現しました。自給には太陽光発電は4KWほどで足りたのですが5.6KWとしましたので理論上は「自給以上の家」となった訳です。

以上により当社の屋根外断熱、壁ダブル断熱工法が如何に省エネ高断熱工法である事がお分かりになったと思います。GX住宅、且つ美しい家を志向される方は大和工務店にどうぞ。

トルストイ自邸

ひるがのCottage第二回記事中、トルストイの自邸の凍害に言及したところ、読者から「トルストイの家の凍害とは、どんな?」という質問がありましたので急遽、それに応える形での記事へと変更、脱線することにしました、悪しからず。

これは私が2011年正月にロシアに旅行した折、モスクワ・トルストイ別邸前での写真です。「地球の歩き方」に「見学可」という案内があったので行ってみた訳です。外国では容易に個人の家を覗く事はできません。個人の家を見ようとすると、どうしても公開されている有名人の家、という事になる訳です。

トルストイの本宅はモスクワからずっと南の「ヤースナヤ・ポリャーナ」にあってトルストイはそこに眠っていると聞きます。ここは別邸で晩年に「復活」を書いた家だそうです。

これは主屋脇の納屋だと思いますが外壁がうねっており、恐らく凍害で沈んだものと思われます。私が行った時は大体外気温マイナス10℃ぐらいでモスクワは晴、物凄く寒かったのですが積雪は少なく、恐らくロシアでは基礎が浅い建物は凍害の危険が出ると思われます。

これはロシアに非常に多い「ペチカ」です。西洋にはこうした煙道熱利用の「壁暖房」が随分あり、暖炉やストーブもその一種と言えるでしょう。このトルストイの家には立派なペチカがほぼすべての部屋に設置されていました。トルストイは伯爵で大地主、超有名作家でもあり大金持ち(両親は早くになくしている)お金持ちの家にはペチカは必須のアイテムだった筈です。写真、椅子の裏の四角い鋳物蓋から燃料をくべると思われます。なお現在モスクワ等ロシアの大都市では道路にお湯が配管されていて各戸(殆どが集合住宅)は「お湯メーター」により料金を払うシステム。

ロシアの古い立派な建物の窓は大抵2重窓になっています。外は―10℃、窓の間0℃、中は+20℃、そんな所です。

これは私が現場でスケッチした間取り図です。2階右端・中二階の部屋で「復活」を書いたとの事。私の目測では敷地面積は≒4000㎡、主屋はほぼ総2階、計140坪ほど?トルストイ別邸と同じ家を造りたい方は玉井までどうぞ!

これはクレムリン、川はモスクワ川、氷が張っている。川はヨーロッパ最大のボルガ川に合流、カスピ海に至る(クルーズもあるらしい、が今は?)がカスピ海は孤立湖であり、この川の水は最後は蒸発で幕を閉じる。

これは乗り合いミニバス(日本にはない・利用は慣れが要る)実はモスクワで地下鉄に乗りまくり、最後、地下鉄でドモジェドボ空港へ(私は少しキリル文字が読める)「空港駅」で降りたら空港はなんと、そこからまだ10km…「アチャー」タクシーいない、ミニバスをやっと見つけると運転手は×印(ロシア白人は東洋人を軽蔑?)と、乗客が手招き、運転手が渋々乗せてくれ空港へ、ハラハラだったが何とかセーフで“ホッ” 危うく帰りの飛行機に乗り遅れる所、ヤバかった!

誤解されたくないので追記。私はロシア文学、ロシア民謡は好きですが今のプーチンロシアは大嫌い。トルストイに「復活」頂きロシアを変えてほしい。Zerensky is great! Putin must be eliminated.

Y邸ひるがのCottage 建設日記

  第2回 設計条件の違い

↑これはY邸付近にあった別荘です。急勾配屋根ですが雪は滑り落ちていません。またストーブ煙突が屋根出しになっています。その場合はできるだけTOPに設置の要があります。雪が煙突を押す危険、使用中だと火災の恐れも生じ、やはり壁出しの方が安全でしょう。

↑これは北海道で近年流行の無落雪屋根(屋根勾配がほぼ無い)の家の写真、札幌等の市街地だと隣との隙間がなく、そこに雪が溜まってトラブルの元に、それを避ける為、雪は「風で飛んでいく、or春まで屋根に溜め解けるのを待つ」北海道では案外積雪量が少ない(が解けない)事情もあります。私はフィンランド・有名建築家・アルバアールトの自邸を見た事がありますがやはり無落雪屋根でした。

建築構造 の考え方は①自重②積載荷重③風or地震荷重④積雪荷重、の4つに対抗するというものです。4つのうち、ひるがのに特有なのは積雪荷重だけです。岐阜市は一般地で積雪指標40㎝に対し、ひるがのは多雪区域で、約6倍、基礎、及び構造木材が随分大きくなってきます。

雪も雨もできるだけ早く地上に落とし溜めない事が建築では賢いやり方です。多雪地域では複雑な屋根だと、そこに雪が溜まるので単純切り妻が一番無難です。Y別荘では当初8角形を試案しましたが、結果、単純切妻(雪割付き)としました。なお屋根をいくら急勾配にしてみても滑り落とす事は容易ではありません(写真参照)

薪ストーブの煙突も悩む所です。できるだけ雪の影響を受けない為Y別荘では屋根出しではなく壁出しとしました。は迷うところですが、北海道では通常設置しません。雪で押され樋の意味がないからです。今回Y別荘ではナシとしました。

これは私が設計した高原の保養所です。勿論凍結深度と落雪を考慮しております。

↑1999年の正月、私ほか3人、八方尾根登山、極寒、地吹雪、風速40m?立っていられない、谷底へ吹っ飛ばされる恐怖、ピッケルを突き刺し膝を屈して耐風姿勢を取り、風が息をするのを待ってまた行動…霜柱を踏みながら登攀、ジャリジャリとガラスの割れるような嫌な音が、霜柱は恐らく10㎝以上あったでしょう。この霜柱が建物を持ち上げる事があるのです。私はモスクワのトルストイの自邸を見学した事がありますが土台が傾斜していました、恐らく凍害のセイだと思われます。

この八方尾根登山、真上を見ると空は真っ青、つまり晴天でした。が、前後左右は真っ白でホワイトアウト、つまり雪は降っているのではなく強風が積もった雪を吹き上げていたのです。山小屋に帰ると全員鼻の辺りが黒くなっていました、軽い凍傷だと思います。登山は色々な自然現象が体験できて面白いですよ。

凍結対策:「水」というのは建築では常に厄介です。その一つが「凍害」です。土には水が含まれ基礎が浅いと寒冷地では霜柱が基礎を持ち上げる恐れが出ます。ひるがのは寒冷地で凍害の恐れがあり深基礎としております。が、多雪のひるがのでは雪が地面をカバー、断熱材となりますので比較的安全です。

更に凍結による水道管破裂の恐れがひるがのでは激しくなります。別荘では冬、無人になる事も多く「春に行ったら水浸し」という事故はよく聞きます。北海道では夜寝る直前に水道管を空にします。空にすれば凍れない、従って破裂しないからです。水道工事は寒冷地では費用がUPします。

除雪等:郡上市は市道(公道)については除雪しますが私道については除雪しません。Y別荘は当初別の分譲地で計画していたのですが、そこが市道に面しておらず上下水、その他公共サービスに不安大きく、土地を変更、建設地は市道に面し、上下水は郡上市管理となり除雪もしてくれ安心となりました。別荘地を買う場合はよく調査する必要があります。

Y邸ひるがのCottage建設日記   第一回・経緯

完成したY邸Cottage 6月5日午後3時頃 見学可能-当社岡崎へ

今年1月中旬 大雪に埋もれるY邸Cottage 屋根葺き工事終了時

ひるがのCottage居間 38畳以上ある 大黒柱は檜8角形32㎝

Y邸・ひるがの別荘のY様への完成引き渡しを6月5日(木)行いました。この日は快晴、関事務所出発PM1:30、関気温は31℃、現地へは約1時間、ひるがのスマートインター下車、標高1000m、快晴、気温24℃、ほぼ無風、大日岳、白山が良く見え、快適でした。

 国の「省エネ地域区分」で行きますとここ「ひるがの」は3地域(全国は8地域に分離・岐阜市は6地域)平地条件だと青森市同等となり冬は過酷ですが夏は快適となります。

 Y様の本宅は関市(6地域)にあり、昨年の夏の過酷な暑さ等で「ひるがの別荘」を考えられ、関の本宅等3戸を新築させて頂きしました当社に土地探しから設計施工までを相談、依頼頂き、このほど完成・引き渡しとなった経緯です。

 当社は郡上市では八幡、大和、白鳥までは結構な実績があり、多雪には慣れているのですが「ひるがの」は今回初めてです。標高で行きますと岐阜市御手洗の私(玉井)の自宅で15m、会社のある関市山田で35m、八幡で約300m、大和約400m、白鳥約500m高鷲700mひるがの1000mとなります。

 伊吹山(1389m)から能郷白山(1620m)大日岳(1709m)白山(2702m)の「奥美濃逆L山地」は日本有数の多雪地域の一つです。多雪の原因は日本海の対馬暖流と偏西風にあります。もしこれが逆流し北東から南西へと流れる寒流となれば雪は激減し、日本の気候は全く異なるものとなるでしょう。

 今年は「10年に一度、いやこんな大雪初めて」という地元「ひるがの」や荘川の住民もびっくりという大雪に見舞われ、その真只中でこのY邸は「ビクともせず」(大工工事を担当した当社早田3兄弟の感想)建設され、無事5日にY様への引き渡しとなりました。

「ひるがの」に行った方は多いと思いますが、そこで家を建てるとなると全く話は違ってきます。過酷な条件での住宅建設は通常地域での住宅建設に参考になります。(私は真冬の北海道、真冬のロシア、砂漠、高地-最高標高4800mに行って過酷気候を体感しております)

今回この体験が一般地域での住宅の建設にも参考になる…と考え「Y邸ひるがのCottage建設日記」としてシリーズで書いてみる事にしました。是非感想等お寄せ下さい。

                          第一回終了 第二回へ続く

大和工務店の住まいがカタログの表紙に!

こんにちは!

今年のですが先週から咲き始め、だいぶ花が揃ってきました。

今週末にちょうど見ごろを迎えそうですが、天気予報を見ると日曜日の天気が少し気になるところ。お花見をするなら明日がベストになりそうですね。


年度が変わり色々なものが新しくなる時期ですが、先日その中でうれしいものを発見しました。

これは大和工務店がフローリングなどでよくお世話になっている「プレイリーホームズ」さんの新カタログです。

プレイリーさんは一般の方々には少し馴染みのない会社様かもしれませんが、無垢フローリングや木製建具等、木にまつわる商品を扱う大きな商社様。 住まいを建設中の方も既に建てられた方も、その足元のフローリングはプレイリーさんの商品かもしれませんよ。

話は戻りますが、今回のプレイリーさんの新カタログのこの表紙「気持ちよさそうな窓際を歩く女の子」が印象的ですが、なんと弊社で建てて頂いたお施主様の家の写真を使っていただいています!(掲載されるとは聞いていたのですが、実際にどこに使っていただけるのか迄は聞いていませんでした・・・)キャッチコピーの「ハダシで暮らしたくなる。」が本当にピッタリですね。

この表紙以外にも玄関ドアや

屋内建具の写真にも掲載して頂いています。


このカタログはインターネットからも閲覧可能になっています。「こちら」をクリック

住まいを検討中の方で、もし提案されている新建材の床や建具などに迷いを感じていたら、プレイリーさんの商品を取り入れると幸せになれる!・・・かもしれません。

宣伝文句のような書き方になってしまいましたが、いい商品をたくさん取り扱われているのでカタログのページを送るだけでも結構楽しいですよ。

ウダツの街で「大鈴木家」改装

美濃市の「ウダツ」旧市街を散策された方も多いと思います。そこに今から350年前の江戸時代、1676年に母屋が建った古民家「(だい)鈴木家」があります。この一角にスタジオを構える映像制作会社「HIORYES(ヒオリス)」が地域の交流拠点にと邸宅の全面改修を決意され、大和工務店が改築、改装しました。

ウダツ本通りに面した「大鈴木家」(紙遊のすぐ西)

“文化紙”が普及する、つい最近まで美濃市は全国有数の和紙生産地であり、このウダツはその集積地、全国からの仲買人で賑やか、非常に裕福な街だったのです。

改装前の内部

鈴木家は大地主で酒屋だったのですが、相当な名家(江戸の頃は本陣)で明治44年に岐阜・柳瀬から美濃町までの25kmに「美濃電気軌道」(後の名鉄美濃町線-1999年廃線)を開通させた立役者との事です。

改装後の内部 スタジオはまるでマジックハウス、驚きますよ
改装後の内部 造作キッチンはコンロの方向が逆で面白い

「総(ぬり)(ごめ)造り」(外壁全体を白漆喰で塗り込む)大黒や丸太梁は太く豪壮、縁側は巾広の松の縁甲板、二階天井は通りへと低くRに反った竿縁天井、ガラス格子戸の透明ガラスは見事に歪んで中庭を引き立て、楠の巨木が生える庭の向こうには白漆喰のお蔵がどっしりと佇んでいます。

改装後の内部 2階和室 調度品も一見の価値あり
改装後の内部 庭に面した縁側と歪んだガラス こんなガラスは今手に入らない

「HIORYES」の藤田社長は、当社で自宅を新築頂いたロマン溢れる、センス抜群のお客様です。完成後は内覧会を予定されているそうなので、うだつの町並み散策と合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。また今後は趣のある邸宅でブライダルや成人式の前撮りなど、個人向けの撮影も開始されるそうです。

https://hioryes.jp/
毎年秋の夜ウダツで開催「美濃和紙灯りアート展」本年は第31回10月13日-25日・10月26日-12月1日

なお、当社は関市が運営する古民家「あいせき(関市本町で開放中)」の耐震改修、内装改修も施工しております。古民家改築の仕事がありましたら是非当社にご相談、宜しくお願いします。

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